1. 行き詰った日本の酪農

近代酪農の問題点

行き詰った日本の酪農

「 食の安全 」 については、ここのところ、消費者の意識も大きく変化してきました。無農薬野菜や、自然飼育の豚や鳥など、食の質への関心も高まり、生産者の工夫や努力が価格にも反映される時代になりました。しかし、牛乳に関しては、そこまでの盛り上がりを感じません。

世の中の注目度

牛乳が野菜や肉などと決定的に違うのは、いろいろな酪農家が生産した生乳が地域単位でまとめられ、乳業メーカーに原料として供給されている点でしょう。

この仕組みの中では、一軒や二軒の酪農家が安全やおいしさにこだわってもその努力が報われません。買い取り価格も、酪農家のこだわりや牛乳の質を評価したものではないので、生産者の収入を増やすためには、 「 どれだけたくさんの牛乳を供給できるか 」 、もしくは 「 生産コストをどれだけ下げることができるか 」 を追求するしかありません。

これでは、若い酪農家が 「 自分の創意工夫で酪農事業を拡大させていこう 」という意欲も生まれません。さらに、牛乳の小売価格の上昇は牛乳消費の減少につながるのではという懸念もあり、実施をためらう傾向にあります。卸値は一 定、しかし輸入飼料の価格や燃料代・人件費などの生産コストは上昇傾向に。これでは酪農家の経営は厳しさを増すばかりで明るい前途を見出せません。

かつて牛乳は、戦後の国民の栄養不足解消の切り札としておおいに活躍してきました。 安定的な供給のためには、牛乳の一元的な流通や生産管理が必要だったわけですが、そろそろ酪農の在り方を見直すべき時期に来ている、少なくとも、大手乳業の枠組みの外で行われる中小規模の酪農ないし乳業経営を増やすべき時期に来ているものと思われます。